生ける屍となって
「自己紹介をどうぞ。」
担任に促され、その桜色の唇が開いた。
「アベル・リアローズです。
先生のご説明通り、出身はフランスです。
どうぞよろしくお願いします。」
滑らかな心地良いテノールボイスだった。
歌うような声だと思った。
「皆さんきっと興味がおありでしょうね。
何か質問は?」
先生がそう言った瞬間、三十人ばかりが手を挙げた。
私も少し興味はもったが、挙手しなかった。
せずとも、誰かが聞いてくれるだろう。
先生は驚いた様子で、誰にしようか迷った。
なにしろクラスの四分の三が挙手したのだ、無理もない。