モノクロ*メランコリック
*第一話
猫かぶりな彼女
「ミアちゃん、おはよう」
下駄箱の前でそう声をかけられ、私は振り返った。
声の主は、クラスメイトの男子。
「おはよう、立野くん」
笑顔で返すと、立野くんはぼっと火を吹くくらいに顔を赤く染めて、そそくさと上履きに履き替えると去って行く。
私は口元がにやけるのを抑えながら、上履きに履き替えた。
すると近くで物音がして、そちらを向く。
「……………」
そこにいたのは、ジト目でこちらを見つめてくる、クラスメイトの宮部りさだった。
「あ。おはよう、りさ」
「………キモ」
笑顔で挨拶すると、彼女はお得意の毒舌で返してきた。
すかさず上目遣いに、「ひどい、りさ」と言ってみる。
案の定、彼女の顔はこれ以上ないほどに歪んでしまった。せっかくの美人さんが、もったいない。
「……ミア。あたしにまで、『それ』はやめて。この、猫かぶり」
とん、と人差し指で額を押される。私は小さく舌を出して、ふふっと笑った。
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