モノクロ*メランコリック
シロは料理全般が得意で、そのなかでもホットケーキは私の大のお気に入り。
『簡単だよ』と彼は言うけれど、普通のホットケーキとシロのそれは全く違う。
ふわふわしていて、焼き加減も絶妙で。甘過ぎない味が、とっても私好み。
ホットケーキに関しては、シロの作るもの以外口にしないと神に誓っているほどよ?
ホットケーキを食べる私の横で、シロは静かに読書を始める。これも、いつも通り。
シロは見た目の印象を裏切ることなく、読書を好む。
このときだけかける黒縁の眼鏡で本を読むその姿は、女子に騒がれるだけあって、絵になるのよね。
やがてホットケーキを完食して、暇になってしまった。
私はシロの読んでいる本を、ちらりと覗き込む。
「なに読んでるの」
「…………」
この沈黙が、決して集中しているからではないことは、もうわかっている。
話しかけないでというサイン。
…まあ、承知の上だけれど。
制服のカーディガンのポケットから携帯を取り出し、適当に触る。
メール…りさから一件。
『数1のノート返せ!』。
…そういえば、ノート、借りてたっけ。