モノクロ*メランコリック
『ごめん、今日返しに行くね』、ハートマークをつけて、送信。
きっと、また『うざ』という絵文字なしの冷たーい返信が来るに違いない。
ちらりと横に視線を移すけれど、見える表情は先ほどと全く変わっていない。
私は携帯を再びポケットへ入れて、「シーロ」と呼んだ。
「ねえ、シロ。暇だわ」
「…………」
「シロ」
「…………」
「シロ、シロ、シーロ!」
ぱたん、と本を閉じて、彼が「なに」とため息をつきながらこちらを向いた。
私はふふっと笑って、シロの手から本を奪う。
ぱらぱらとページをめくると、なにやら難しそうな文章が羅列されていた。
今日は、小説ではないらしい。
ブックカバーをめくって表紙を見ると、どうやら哲学に関するものだとわかった。
「…もう少し、高校生らしいものを読んだらどうなの?訳わかんないわよ。何書いてるの、これ」
「馬鹿な美愛子にはわかんないよ」
「…なんですって?」
ソファから立ち上がり、シロを見下ろす。
「頑張って読めば、このくらい理解できるわよ。私を誰だと思ってるの?」
「その発言が既にアホっぽいね...」
彼は心底残念そうな顔をして、「いやもう...本当にアホ...」となぜか『アホ』を繰り返してきた。その顔と言い方ものすごく腹立つ!