モノクロ*メランコリック
「とにかく急いでて、その場にいたひとに声かけちゃったんだよね。それが進藤くんだったんだけど…ミアちゃん?大丈夫?」
驚いたせいで、反応が遅れる。
私は頑張ってニッコリ笑いながら、「進藤くんだね。わかった」と返事をした。
「うん、ありがとう!お願いしまーす」
絢ちゃんはそう言うと、背景係のところへ戻って行った。
「………」
ざわざわと騒がしい教室の中で、私は袋を持ったまま立ち尽くす。
……神様は、つくづく意地悪なようね。
まさか『姫宮さん』が『進藤くん』を訪ねることになるなんて。
しかも、昨日の今日よ。気まずすぎるわ。
はーっと大きく深呼吸して、覚悟を決める。
大丈夫、大丈夫。
私は今、『姫宮さん』。
シロは、『進藤くん』。
よし、行けるわ。
私はビニール袋を片手に、教室を出た。
てこてこと騒がしい廊下を歩いて、四組を目指す。
どこのクラスも、文化祭に向けてすっごくやる気。
楽しい雰囲気だからか、気分も踊る。