モノクロ*メランコリック
シロは私の戸惑った表情を見ると、ハッとしたように腕から手を離す。
唇を噛んで、気まずそうに私から目をそらした。
幸い、周りに今の声は聞こえていなかったようで、安心する。
文化祭準備中でよかった。
「……なんでもない。ごめん」
「ううん。えと、…行くね。じゃあね」
くるりと踵を返して、四組をあとにする。
身体の中と頭の中でいろんな感情が暴れまわっていて、なんて言ったらいいのかわからない。
廊下を早足で歩きながら、私はさっきシロに掴まれた腕に触れた。
…熱い。
熱いわ、シロ。
どうしたの。
どうして、引き止めたの?
どうして、あんなに寂しそうな顔をするの?
まるで、『待って』と言う子供のようだった。
口から思わず飛び出してしまった、『シロ』も。
目があったあの瞬間だけ、確かに私達は『美愛子』と『シロ』だった。
ふたりだけの時間が、ほんの数秒だけ流れていた。