モノクロ*メランコリック
…さっきのはたぶん、私が澤野くんに困ってるのを見て、鳴らしてくれたんでしょうね。
さりげなくこういうことするから、この人は本当にズルい。
…ありがとう。
私は女優ばりの演技をかますべく、深呼吸をする。
そして、再び個室の扉を開けた。
みんなの視線が、一気に集まる。
さっきの席には戻らずに、私を誘った花凛ちゃんのところで足を止めた。
彼女に、こそりと耳打ちする。
「さっき親から、電話があって…その、カラオケの前まで迎えが来てるの。だから、もう出なきゃいけなくて」
「マジで?そっか、もう時間も遅いもんね」
「ほんとにごめんね」
「いいよいいよ!うちらこそ色々ゴメン。今日は来てくれてありがと!ほんとに助かったー」
花凛ちゃんが、いい子でよかった…。
私が顔を上げると、澤野くんとちょうど目が合う。
けれど不自然ではない程度に、目をそらした。
…うう、何故か胸が痛む。
嘘をついているからだわ。