モノクロ*メランコリック
みんなの方を見て、「私、帰るね」と言った。
「えーっ、なんで?」
「さっきの電話、親からだったの。カラオケの前まで迎えに来てるって…ごめんね」
「そっかー、なら仕方ねえな」
「今日はありがと。じゃあまた、学校で」
シロとは最後まで、目を合わせなかった。
みんなに「バイバーイ」と手を振られながら、個室を出る。
最初は急いでる風を装って小走りにしていたけど、なんだかそれも面倒になってきて、やめた。
カラオケを出た瞬間、ハァ、とため息をつく。
外はもう暗くって、少し寒かった。
高校生が行かなそうな、こじんまりしたカフェを見つけて、そこへ歩く。
シロと待ち合わせていたところを学校の人に見られたら、わざわざ外で待ち合わせた意味がない。
…澤野くん、私のなかの要注意人物リストに、追加されちゃったわ。
やっぱり本場のナルシストは違うわね。自信の度合いが違う。出来れば見習いたくないけれど。
よくよく考えたら、私はすごく危ないことをしていたのかも。
この合コンにシロが来なかったら、もしかしたら澤野くんが私を送ると言い出したかもしれない。