モノクロ*メランコリック
それからは、ずっと無言で歩いた。
互いの家の前についたとき、私はどうしようもなくなって、今、彼とこのまま別れるのは、なんだかまずい気がして。
シロに、「ホットケーキ食べたい」とわがままを言った。
「…夕飯、食べれなくなるよ?」
「いい。ホットケーキが夕飯」
「七時以降は、甘いもの食べないんじゃなかったっけ」
「一日くらい大丈夫よ」
譲ろうとしない私に、シロは少しの間考えるような顔をして、「…いいよ」と言ってくれた。
それから、シロの家でホットケーキを待つ。
その間も、お互いにしゃべらなかった。
私は泣くのを堪えて、ソファの上でひとり、考えていた。
…シロって、こんなに情緒不安定なひとだったかしら。
私にとってのシロは、いつも優しくて、穏やかで。
私のために、私の知らないところで、色んなことを心配してくれていて。
そのことにも私が気づかないくらい、表情は一定だった気がする。
私と会話しているときは、大抵呆れたような顔か、優しい顔か。
叱るときは一応怒った顔をするけれど、すぐにいつも通りに戻る。
…けれど時折、すごくすごく愛おしそうな目をして、私を見つめてくる。
その表情が、私は何よりも好きだった。