モノクロ*メランコリック


驚いて、涙の浮いた瞳を見開く。

シロは、今までに見たことがないくらい、思いつめた顔をしていた。


「…いきなり、俺の彼女がどうとか言い出したと思ったら、俺のホットケーキ他の女の子が食べるの、やだとか言ってさぁ…」


シロが、あのときのことを再び口に出したのは、初めてだった。

びっくりして、涙も止まる。

シロは唇を噛んで、辛そうに目を伏せた。


「…意地悪したくなるの、今まで抑えてたのに。美愛子、なんかしおらしい反応してくるし」

「し、しおらしい反応って…」

「俺はダメだって思ってんのに、美愛子は何かと煽ってくるし。俺だって必死だよ。…さっきだって、澤野と話してんの見ただけで、腹立ったし」

「…………」


心臓が、痛い。

シロから伝わってくる、まっくろな『独占欲』。


…嬉しいはず、なんだけど。

シロの顔を見ていたら、素直に喜べるはずもなかった。


どうして、『ダメ』だって思うのよ。


「…し、シロ」

「大体美愛子は、警戒心なさすぎなんだよ。俺だって男だし、幼なじみだからって油断してるのかもしれないけど、すげームカつく」


…シロが、シロじゃない。

いいえ、違うわ。

これは、シロ。


どこかで見たことがある、これは確かに私が知っている、シロ。



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