モノクロ*メランコリック


困惑する私に、りさは続ける。


「子供の頃の衝撃的な記憶って、今でも案外残ってるものよね。…ミアにも、わかるでしょ?」


そう言われて、私は言葉に困った。

…わかるわよ。


今でも思い出せるもの。…本当の父親の、罵声が。


「…真白も、同じよ。小さい頃に両親が離婚して、母親が出て行ったことが、まだあいつの中に残ってるの。…『恋愛はいつか終わるもの』だって、思ってるのよ」


りさの言葉に、私は目を見開いた。


…シロの、お母さんが。

いなくなったのは、小学五年生の頃。


そうだわ、思い出した。

シロの、あの寂しそうな顔。


あれは、お母さんがいなくなってからしばらく、シロが度々見せていた顔だ。


心配する私とりさに、幼いながらに彼は『大丈夫』と言って。

気づけば、立ち直っていた。

…けれど、そう見えていただけだったんだわ。


あの記憶は今もシロのなかに、寂しさと共に残っているのね。




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