表現する気持ち
彼女はグッと歯を食いしばった。

それからというもの、彼女は元気になる以前よりも、人と接することを減らした。

感情の昂りが、力の制限を越えてしまうことを自覚したからだ。

本当はネックレスを外せば良かった。

けれど外そうとネックレスを見ては、赤いハートを目にして、思い留まってしまう。

外すよりも、自分で感情をコントロールすればいいだけだと、考えてしまうのだ。

周囲の人間の態度は冷たいものの、何かを傷つける方が怖かった。

彼女はしばし、感情を殺した生活を送っていた。

…だが、それも長くは続かなかった。

人と触れ合うことを減らすと、だんだんストレスが溜まっていった。

何故自分がこんな目に合わなくちゃいけないのか。

そもそもあのクラスメートが自分を怒らせなければ、こんなことにはならなかったのではないのか。

誰にも打ち明けることのできない不満は、クリスタルの中の赤い石を大きく成長させていった。

バキンッ!

「えっ?」

彼女は驚いて顔を上げた。

無意識に掴んでいた鏡が、割れていた。

「あっ、今…イライラしてたから?」

彼女は呆然と割れた鏡を見下ろした。
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