表現する気持ち
少しの感情の昂りも、すでに力となって現われてしまう。

ネックレスはすでに、クリスタルの部分は無くなっていた。

真っ赤なハートのネックレスを首から下げ、彼女は暗い表情をしていた。

「外さなきゃ…でも…」

ハートを見るたびに、外そうと思う気持ちは消え失せてしまう。

毒々しくも、見るモノを魅了する赤い色。

それが眼に焼き付くのだ。

「もう…部屋から出なくてもいいかな」

外すぐらいなら、外の世界との関わりを絶った方が良いと思ってしまう。

そうして彼女は部屋から出なくなった。

けれど両親は心配する。

なので夜にたまに散歩することにした。

人に見られるのがイヤだった。

例の学校での事件は、かなり噂になっていたから。

そしてある日、彼女は試した。

街外れには廃墟が建ち並んでいる。

景気が良い時は盛り上がっていたが、不景気になるとここには人が寄り付かなくなった。

廃墟となったマンションやビル、それに工場が建ち並ぶここには、人は滅多に寄り付かない。
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