表現する気持ち
彼女はネックレスを握り締め、眼を閉じた。

心の底から、封印していた激情がわき起こる。

彼女は足を踏み締め、その場でジャンプした。

すると軽く3メートルは跳んだ。

建物のベランダに足をかけると、次々と跳び、ついには30階建てのマンションの屋上までたどり着くことができた。

そこまで息1つ切らさず、しかし彼女は愁いの表情を浮かべていた。

「どうしてっ…こんなことができるの?」

例の店に行こうとした。

だが何故か、何度行っても行けなくなっていた。

あの建物と建物の間の道を通っても、裏通りに出るだけ。

そこは住宅街になっていて、店なんてどこにもなかった。

住人達に店のことを尋ねるも、誰も知らないと首を横に振るだけだった。

店の人達のことを聞いても、知らぬ存ぜぬという言葉が返ってくるだけ。

「どうなっているんだろう…」

ため息をつきながら、屋上の柵に寄り掛かった。

感情を押し殺そうと思っても、一度解放することを覚えてしまったせいか、中々上手くいかない。

そのせいで、部屋中の物が壊れてしまっている。

壊したくて壊しているワケじゃない。

けれどもれ出した感情が、暴走しているのだ。
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