シーサイドブルー
* * *


消えたいと思う思いとは裏腹に身体は生きているし、身体が生きている以上精神だって生きている。だからこそお腹がすくのだ。


「少食だね。」

「見てて楽しい?」

「いーや、全然。だから笑顔で食べてよ、せめて。」

「笑顔なんてどこかに置いて来たわよ。」

「…うん、なんだかそんな感じ。」


彼との付き合いは短いけれど、だんだん分かって来た。
私が彼との距離を〝居心地が悪い〟とは思わない理由。


彼は私の言葉をそっくりそのまま受け取ってくれる。私の言葉を包んでくれる。私はきっと、それに心地良さを覚えている。


「どうしてそんなに笑えるの?」

「どうしてそんなに笑えないのさ?」

「…質問に質問で返すなんて邪道よ。」

「そうかな?ただ、自分で考えるのを放棄した子にやすやすと答えを示す気はないだけだよ。
って言っても俺の答えが正式な〝答え〟ではないだろうけど。」


一筋縄ではいかない。
確かに彼の言う通り、私は考えることを放棄している。


「…自分じゃよく分からない。いつの間にか笑えなくなった。」


本当のことだ。いつからか笑うことをしなくなった。


「原因を突き止めることも、笑えるようになるためには必要かもしれないけど、気がついたら笑ってたってアリだと思うよ、俺。
恋とおんなじ。」

「恋?」

「そ。気がついたら始まっちゃってるもんよ、恋なんて。」

「…ふぅん。」


恋なんて知らない。疎遠すぎて。

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