シーサイドブルー
3.話せば長くなるけれど
私の問いに真剣な表情を向ける彼から、何故だか目が離せない。


「…そうだね、人並みには。」


零れた笑みが温かくない。


「ごめん。」


咄嗟に謝罪の言葉が出る。
そんな顔をさせるつもりじゃなかった。


「いいよ。俺の方こそごめんね。君にそんな顔させたいわけじゃないよ。」


〝同じこと〟を〝同じタイミング〟で思った。

触れないけれど触れるように、そっと透けた手が伸びてくる。
私の頬を掠めて、通り抜ける手を彼はぎゅっと握った。


「…触れることさえ、叶わない。」


ぽとりと落ちた言葉が冷たい。


「って勝手に触っちゃ今時捕まるんだっけ?」


声のトーンを明らかに変えてそういう彼。
…無理、してる。


「凪。ごめん。」


私は確かに彼の名を呼んだ。

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