シーサイドブルー
「え…?」

「子どもって言っても、あー…生徒か。中学2年生の女の子、助けようとして潜ったら俺が死んだわけ。」

「っ…。」


…こんなこと、本当にあるんだろうか?
ニュースや新聞でしか見ることのない、遠い世界の話だと思っていた。それなのに…。


「だから勘違いしないでよ?決して後追い自殺とかではないんだから。」


すぐにおどけた表情で空気を和ませようとするのは、もはや彼のクセに思える。


「君みたいに命を捨てたいなんて、たとえ最愛の人が死んだとしても思わなかったよ。」


刺さる。彼の言葉が、妙に。


「だけど、だからといってそれが君の自殺を止める理由にはならないけどね。でも、生きたくてももう生きることができない命もあるんだよってことは知ってて損はないと思うよ。」


彼の物言いが、やはり嫌いではない。
自分の意見を絶対だと押し付けることはしないからだと思う。


「人間って無情な生き物でね、たとえ心の底から愛してるって思った人が死んでしまっても自分は生き続けちゃうんだ。自分の哀しみや苦しみなんかは関係なく。」


彼の視線は水平線上にのみ注がれている。

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