シーサイドブルー
4.自分を好きにはなれないから
私がそれなりに落ち着きを取り戻した頃を見計らったかのように彼が言葉を発した。


「それじゃ今度は君の番。」

「…聞きたいの?」

「俺だけ古傷晒すなんて不公平だろう?」

「それも、そうかも。」

「それじゃあまず、どうしてこの海に来たのか教えてよ。」


穏やかに微笑んでいた表情がゆっくりと引き締まっていく。
真剣な眼差しがただ私に向けられている。


私は小さく息を吐いた。


「…全て、終わらせたくて。」

「そっか。じゃあ止めて正解だ。」

「…止める人なんて誰もいないと思ってたから、正直驚いた。」

「俺も驚いた。俺の声が聞こえるなんてさ。」


彼の相槌は妙に心地良い。
こんなに上手く話せるのは本当に久しぶりだ。


「それでも…私は本当は呼び止められたかったのかもしれない。」


話し始めてしまえば、意外と言葉はすんなりと出てくる。
…それもそのはずだ。〝言いたいこと〟はたくさんあった。


それを受け止めてくれる人が、誰ひとりいなかっただけで。


「私は、私の言葉を受け止めてくれる人が…ほしかった。」


自分の望みなんて、ちゃんと分かってた。
だからこの海に来た。

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