シーサイドブルー
「自分がこんな想いを抱いたせいで、なんて思うようになったから…。」


自分を好きにはなれないから。
ますます嫌いになってしまうから。


だからこれ以上、嫌いになる前に。
自分の好きだと思ったことを好きだと思っているうちに。


「自分が自分から離れてしまう前に、自分であるままに終わりたかった。
最後は好きな自分でいたかった…から。」


彼はただ黙って私の話を聞いていた。
時折強い波の音が聞こえる。


言いたいことがあらかた言い終った。
こうして言葉にしてしまうと何だか妙に呆気ない。


「ちょっと刺さった。」

「え…?」


不意に少し明るい声が降って来て、私は顔を彼の方に向けた。


「最後は好きな自分でいたい、って。
確かにあの子を助けるために動いた自分は好きだったかも。
…好きな自分で終われてたのに、何後悔してんだろって。」


ははっと軽く笑みを零して頭を掻く。
彼の髪がさらりと揺れる。


「君は今時驚くくらいに純粋で真面目で優しいだけなんだよ。
だからこの世界は生きにくい。
でもそんな君だから、俺は憧れを追い続けてほしいって思うんだと思う。」


そこまで言って
「ま、これは俺のエゴっちゃエゴか。」
と誤魔化すように付け足した。

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