シーサイドブルー
「良い夢だと思うよ。
…って夢に良いも悪いもないけど。
あとさ、その意志の強さは好きになってあげればいいよ。
俺も好きだって思う。」

「…ごめん、ちょっと意味が…。」

「あ、回りくどかった?ってか説教くさいよなー…俺。」

「そうじゃなくて。
好きになってあげるって…何を?」

「だから、君のその意志の強さだよ。
好きなものを好きだと言える強さ。
どれほど周囲から断ち切られても憧れを持ち続ける強さをさ。
その強さは誰でも持ってるものじゃないよ。」

「…そうなの?」

「少なくとも俺にはないかな。
だからそういうところに惹かれるのかも。」

「ふぅん…。」


あまりに肯定してもらえるから、どうしていいか分からなくなる。
なにしろ肯定され慣れていない。…なんだか日本語がおかしい。


「人に好きだと言ってもらえて、初めて好きになれたりするもんだよ。自分のことなんて。
基本は自分なんて大嫌い。
…稀に大好きな人もいるけど。俺は自分のことがあまり好きじゃない。」

「そうは見えない。」

「え、ナルシストってこと?」

「そ、そうじゃない!そうじゃなくて…ただ、自分のことをそのまま受け入れてるっていうか…。」

「あー…それはそうかもね。
だってじゃないと自分が苦しいじゃん。
好きとか嫌いとか関係なく、自分のことは受け入れるよ。
でもなるべくなら好きになりたい。
だから周りの人に好きになってもらいたい。
…相手を愛したくて愛するんじゃないよ。
自分を愛したくて、そして自分を愛してもらいたくて自分じゃない〝誰か〟を愛する。
俺が彼女を愛したのも、きっとそんな理由。」


とても自分本位な言葉だ。
でもだからこそとても納得がいく。


好きにはなれなくても、自分をやめることはできない。

< 26 / 44 >

この作品をシェア

pagetop