シーサイドブルー
「前にも言ったけど、生きれるなら生きた方がいいよ。
こんな身体になったらなったでやりたいこととか出てきちゃうし。」

「…なに、やりたいことって?」

「君に触れたい、とかさ。」

「…は?」

「その反応、期待してた。その目も。」


…一体私がどんな目をしているというのだろう?
生憎ここに鏡は無いから分からない。


「別に変態的な意味じゃなくてさ。
今までずっと一人で抱え込んできて辛かったでしょ?
だからよく頑張ったねって言って…。」


彼の透けた手が頭の上に乗る。
もちろん感覚は無い。
そう、見えるだけ。


音だってしない。
でも聞こえる気がする。
ポンポンと軽く撫でられる音。


「こんなこと、したかったなぁって。」


柔らかい笑顔が夕日に溶ける。
夕日の方が強すぎて、彼が余計透けて見える。


「…気持ち、だけで…充分。」

「俺が充分じゃないんだよ。」

「…あ、そ。」


そっけない返事しか出来なかった。
なんだろう、落ち着かない。

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