シーサイドブルー
5.目が合ったとき
*凪side*


名を呼んだ。
その時に目が合った。


目が合ったとき、あ、この子には俺が見えてるってすぐに分かったんだ。


そして今、俺の姿を一番初めに見つけてくれた人が彼女で本当に良かったとそう思っている。


「…そろそろ限界、かな。」


透けた手を見つめて、呟いた。
彼女は昨日よりも穏やかな表情を浮かべて眠っている。
…良かった。彼女の話を聞くことができて。
そして何より、自分の話をすることができて。


こんなことを言うとなんて自分本位な人間だと思われてしまうかもしれない。
それでも、どんなに綺麗事を並べたって誰しも自分が一番可愛い。
だから話せて良かった。自分のために。
聞けて良かった。それも自分のため。
彼女のためにもなっていれば、一石二鳥くらいなもの。


一昨日よりも進んだ〝透け具合〟
未だかつてこれほど透けたことはない。
…なんだか変な物言いだ。でも事実なのだから仕方がない。


「ユーレイライフも終わり、かな。」


あれほど終わりを願っていたはずなのに、いざそれが近付くと心残りだなんて勝手にも程がある。
分かっていてあえて言うとすれば、心残りはもちろん彼女、海風だ。

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