シーサイドブルー
「どこにいるの…かな。」


ただ、とてもシンプルに残ったのは彼への想い一つだった。


〝会いたい〟と願う想いだけがただただ残って、それを海に置き去りにできない私は、また苦しい想いを抱きかかえる。


ありがとう
会えて良かった
どんな言葉を尽くしても彼に対しては足りない気がして仕方がない。


「会い…たいっ…。」


彼が消えて1週間。


あまりにも世界は変わらなくて、彼の言ってたことの意味を知った。
きっと彼も同じ想いを味わったのだろう。


大切な〝彼女〟が消えても自分は生きてしまう。
世界は何も変わらない。
〝彼女〟の空白に気付き涙するのは、自分だけ。

私にとっての彼もまた同じだった。
〝彼がいない〟という空白は確かに世界の空白なのに、それに気付くのは私だけ。


想いだけしか残らない。
彼に対する想いと、彼から向けられた想い。


彼に対する想いは1週間経っても朽ちることなく、鮮明さを保ったまま息づいている。


彼から向けられた想いは今の私を支えている。

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