シーサイドブルー
「…っ…なんで…っ…。」


私は立ち上がった。
頭が現実を上手く飲み込めない。


それに、彼の身体は〝透けていない〟


ちゃんと見たいのに、ちゃんと彼が彼であることを確認したいのに、涙がそれの邪魔をする。
視界が滲む。それも信じられないスピードで。
私は制服の右腕で目を拭った。


「そんなに強くこすっちゃダメだよ。」


そっと目元に〝触れた〟手。
確かに今、彼は私に触れた。


彼の指が涙を掬う。
伝わる体温が優しい。


「なんで…生きてっ…。」

「なんでだろうね。…神様のイタズラってやつ?」

「ふざけないでっ…!」

「ふざけてなんかないのに…心外だなぁ。」

「…っ…。」


涙ってどうしてこんなにも邪魔なものなのだろう?
上手く声も出なければ目だって見えない。
確かめたいことがたくさんあるのに。


私は俯いた。
顔を上げることができない。涙が溢れて止まらない。


ふわりと影が動く。
ポンと頭に重みを感じる。
彼の掌から柔らかい熱が伝わってくる。


「泣かないの。美人が台無し。」


彼はそのまま、私の頭を撫でた。

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