シーサイドブルー
「…君と始めたいから。」

「え…?」


少し離れた身体。
視線は自然とぶつかる。


「海風の話、また聞かせてよ。ちゃんと聞きたい。」

「…うん。私も話したいこと、たくさんあるよ。」


こつんとぶつかる額。
おでこに触れる彼の髪がなんだかくすぐったい。


「1年をちゃんと埋めて、新しく俺を生きるなら隣に君がいたら楽しいかなって思ったんだ。
…目が覚めて、出会いが夢じゃなかったって思った頃には、ね。」


呼吸の音が耳をくすぐるこの位置で、彼は真っすぐ私を見た。


「だから一緒に居てよ。君が俺に飽きるまでは。」


〝飽きる〟なんてこと、あるのだろうか?
だって私はまだまだ彼を知らない。


「少しずつ教えてほしい。
凪がどんなものを見て、どう思うのか。」

「それは俺も知りたいな。海風が何を見て、何を考えるのか。
どんなものを見たいと願うのかもね。」


1年経っても彼の言葉の選び方がとても好きだ。
…自然と出てきた〝好き〟という言葉。


「飽きないよ、とりあえず今は。」

「その答えで充分。…とりあえず今は、ね。」


オレンジ色の夕日が海辺に影を作る。
影は今、一つに見える。

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