海坊主


お母さんは、また泣いた。



「ダメなんて、言うはずないじゃない・・・!」


正直、来るなって言われると思った。



「愛流が、辛い時や悲しい時。お母さん、いつでも、あの家で待ってるから。携帯も、いつでも持ってるから。メールでも、電話でも、していいから・・・」



あたしは、十分に幸せだ。


だって、こうしてお母さんに愛されてる。

店長にも、優しい言葉でさよならしてもらえた。

名前の知らないクラスメートにも、必要とされた。



「あたしね、今も幸せだよ?もっと、もっと幸せになって・・・そしたら、また会おう?」


「愛流・・・サヨナラの代わりに、あなたの名前の由来教えてあげる」


愛流・・・めぐる。あたしの、名前。



「お母さんとお父さん、超ラブラブだったの。そんな、愛がいっぱい詰まったあなたは、その愛を違う形で、誰かに流してほしかったの。
悲しみでも、怒りでも、喜びでも、なんでもいい。あなたの、愛を届けてほしいの」



カフェで、お母さんと別れ、駅に向かった。



お母さんの前では、強がって、泣けなかった。

今になって、涙が溢れる。



あたしは、誰かに“愛”を届けられたのかな?



「海里・・・」



あたしは、“愛”を“好き”って形で、海里に伝える。



届いてほしいな、あたしの愛の形。



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