海坊主


和紀さんとは、海里の話で盛り上がった。


海里とは、小学校からの付き合いだとか。



「あいつ、宿題1ヶ月溜め込んで、先生に往復ビンタされたの」


海里なら、やりそうだ。


最初、この家の家事を任されたとき、洗濯物が堪っていて驚いたのを、今でも覚えてる。



「夏休みのほとんどを、海で過ごしたんだよ。ホント、海が好きな野郎だ」



あたしを助けた時も、海で泳いでいたとか言ってたな・・・。



「2年」


「えっ」


「最低でも、2年は帰れないって」


「2年・・・」


長い。



春夏秋冬が、2回も巡ってくる。



「で、これがあいつからの最後の伝言」


あたしは、今まで以上に耳を傾けた。



「『2年、待ってて。必ず、2年で帰ってくるから』」



宿題を1ヶ月も溜め込むような奴の言葉を信じろなんて、無理に近い。


でも、それが海里だから。


あたしは、信じられる。




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