白いツバサ
☆プロローグ
夜空を覆う漆黒の雲。
そこから激しい雨が降る。
横殴りの雨だ。
雲は月明かりを遮り、世界を闇に染めあげている。
鳴り響く雷鳴だけが、時折辺りを照らし出していた。
その閃光に照らされて、不意に影が浮かび上がる。
暗闇の広野を駆ける1頭の駿馬。
彼は、激しい嵐にも怯むことなく突き進んでいた。
その背には、人の姿も見える。
馬上の人物は、フードの付いた闇色のマントを頭からすっぽりかぶり、馬の背にしがみつくように騎乗していた。
そのマントは激しくたなびき、首から下げた首飾りは千切れんばかりに揺れる。
嵐の広野を疾走する1人と1頭。
そのとき、空が一際まばゆい輝やきを放った。
視界が真っ赤に染まった瞬間、激しい雷鳴と共に近くの大木が砕け散る。
「ああっ!!」
爆風に吹き飛ばされる1人と1頭。
ぬかるんだ地面を何度も転がり、そしてようやく停止する。
雷に打たれた大木は激しく燃え上がり、飛び散った木片は、燃え盛って辺りを照らし出した。
「うう……」
炎の中に、短いうめき声が響く。
マントに身を包んだ人物は、うつ伏せに倒れたまま、ゆっくりとその顔を上げた。
パサッと、フードが背中に落ちる。
現れる金色(こんじき)の髪、藍色の瞳。
年の頃は18、19といったところであろうか。
それは、まだあどけなさも残る少女であった。
18、19歳といえば、明日への希望に満ち溢れていてもいい頃だ。
だが、少女の藍色の瞳は、深い悲しみの色に染まっていた。
そこから激しい雨が降る。
横殴りの雨だ。
雲は月明かりを遮り、世界を闇に染めあげている。
鳴り響く雷鳴だけが、時折辺りを照らし出していた。
その閃光に照らされて、不意に影が浮かび上がる。
暗闇の広野を駆ける1頭の駿馬。
彼は、激しい嵐にも怯むことなく突き進んでいた。
その背には、人の姿も見える。
馬上の人物は、フードの付いた闇色のマントを頭からすっぽりかぶり、馬の背にしがみつくように騎乗していた。
そのマントは激しくたなびき、首から下げた首飾りは千切れんばかりに揺れる。
嵐の広野を疾走する1人と1頭。
そのとき、空が一際まばゆい輝やきを放った。
視界が真っ赤に染まった瞬間、激しい雷鳴と共に近くの大木が砕け散る。
「ああっ!!」
爆風に吹き飛ばされる1人と1頭。
ぬかるんだ地面を何度も転がり、そしてようやく停止する。
雷に打たれた大木は激しく燃え上がり、飛び散った木片は、燃え盛って辺りを照らし出した。
「うう……」
炎の中に、短いうめき声が響く。
マントに身を包んだ人物は、うつ伏せに倒れたまま、ゆっくりとその顔を上げた。
パサッと、フードが背中に落ちる。
現れる金色(こんじき)の髪、藍色の瞳。
年の頃は18、19といったところであろうか。
それは、まだあどけなさも残る少女であった。
18、19歳といえば、明日への希望に満ち溢れていてもいい頃だ。
だが、少女の藍色の瞳は、深い悲しみの色に染まっていた。