白いツバサ
「ガキよ……お前が悪いんだぜ?」
パイロは、口元を歪ませ言葉を続ける。
「お前が、仕事をしてこないから飯が食えなかったのさ」
「働かざる者、食うべからずってね」
ボルケーノも後に続く。
「ご、ごめんなさい! ちゃんとやります! ごめんなさい!」
少年は、痛みと恐怖に顔をゆがめながらも、必死に謝罪の言葉を述べる。
「そうか……」
瞳を閉じ、満足げにうなずくパイロ。
「だったらな……」
次に瞳を開いたとき、そこにははっきりと悪意の炎が見てとれた。
パイロは、もう片方の手で少年の胸ぐらを掴んだ。
「だったら、さっさと午後の仕事に行ってきやがれ!」
そして、力任せに入口へと放り投げる。
痩せた少年の体は軽々と宙を飛び、入口の扉に激突して停止した。
「うう……」
「さっさとおしよ!」
痛みに耐える少年に、ボルケーノの容赦ない言葉が飛ぶ。
「まったく……誰が拾ってやったと思ってんだい!」
まくし立てるボルケーノ。
「アンタは、本当に母親にそっくりのロクデナシだよ!」
その言葉に、少年の顔色が変わる。
少年は顔を上げた。
「なんだい! 文句でもあるのかい!」
自分を見詰める藍眼に、ボルケーノは苛立ちを隠そうともしない。
「死んだアンタの母親の借金を肩代わりしてやったこと、忘れたとでも言うのかい!」
少年は、震える拳を力いっぱい握り締めた。
爪が手のひらに食い込み、うっすらと血がにじむ。
だが、その痛みのおかげで、何とか我を忘れずに済んだ。
少年は、唇を噛みながらゆっくりと立ち上がる。
「それじゃ、行ってきます……」
そして、つぶやくように言うと、フラつく足取りで部屋を出て行った。