白いツバサ
「そう……それじゃ……」
少女は立ち上がった。
(……やっと帰ってくれる気になったかな)
だが、その考えに反し、少女は少年の顔を覗き込んだ。
再び目と目が合う。
心臓が、不意に強く脈打った。
「な、なに……?」
戸惑う少年に、少女はとびきりの笑顔見せる。
「私が友達になってあげる!」
「……はぁっ!?」
予想外のことに、またもや上擦った声が出た。
「お、お前、人の話聞いてたか!?」
「ね、いいでしょ~」
「や、やだよ! いらないよ!」
「遠慮しないの」
そっぽを向く少年の顔を両手で挟み、自分の方へと向ける。
「私、同い年くらいの友達が欲しかったの」
「な、何だよ、自分が欲しいんじゃないか!」
終始、彼女のペースで進む会話。
「あ~、もう! 調子狂うな~!」
困ったように少年は叫んだ。
「ふふふっ、年上の言うことは聞くものよ」
少女は、笑いながら少年の唇に人差し指を当てた。
再び顔が熱くなる。
思わず頭を捻って、その指を振り払った。
雷のような心臓の鼓動を隠しつつ、少年は少女を睨む。
「年上って……お前、いくつだよ?」
「12歳!」
間髪入れず響く声。
少女は、腰に手を当て胸を張った。
「12……ね」
思わず溜め息が漏れる。
「ねぇ、あなたは?」
少女の問いに、少年はゆっくりと口を開いた。
「……14」
「えっ!?」
「この前、14歳になった」
少女の大きな瞳が、更に大きくなる。
「う、嘘でしょ? だ、だって……」