白いツバサ
しばしの時が流れ、少女は建物に辿り着いた。

そこは、古びた小さな修道院のようだった。

灯りは、この窓から漏れている。

入口に立った少女は、静かにその扉を開いた。

さほど広くはない室内。

そこには、数人で腰掛ける長椅子が、いくつか並んでいた。

その長椅子に挟まれた通路の先に、宝座と呼ばれる祭壇の机がある。

更にその奥には、優しい微笑みを浮かべた聖母の像があった。

壁際には、覆いをかけられた奉献台も見える。

それらは、七枝の燭台に灯ったロウソクの炎で照らされていた。

揺らぐ炎に浮かび上がる聖堂。

それは、とても幻想的な空間だった。

ここで修道士が祈りを捧げるのだろう。

その光景を胸に浮かべ、少女はしばしの間、瞳をとじた。

そのとき──


「あら、こんな嵐の夜にお客様なんて」


不意に響く声。

少女は驚き瞳を開く。

そこには、1人の修道女が立っていた。

年の頃は20代後半といったところだろうか。


「何かお困りごとでしょうか?」


少女を見詰め、修道女は優しい笑みを浮かべた。


「神は、全てにおいて平等です。良ければお話になってみて下さい」


優しく静かで、安らぎを与える声。

修道女の声は、少女の心に深く染み渡った。

心の中に、忘れていた温もりが広がっていく。

少女の口が、震えるように開いた。


「私は……」


不意にその瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。


「私は……!」


溢れ出た涙は、自分の意志では止めることが出来ない。

少女は力なく膝をついた。


「私は……大切な人を殺してしまった!!」


淡い灯りに照らされた小さな聖堂の中、 少女は泣き崩れるのだった。

その手に、白い羽の首飾りを握り締めて……





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