白いツバサ

(こんな時代もあったな……)


不意に目頭が熱くなる。


「どう? ……思い出した?」

「うん……」


少年はうなずき、体を起こした。

少女も寄り添いながら一緒に起き上がる。


「ありがとう」

「そう……良かった」


そう言って微笑む少女。

見つめ合う2人。

少女の瞳には、一点の曇りもない。


(純粋な目をしている……)


少年は、優しく少女の肩を掴んだ。


(だからこそ──)


そして、自分に寄り添っていた体を押し戻す。


「お前……やっぱり帰れよ」


(こんな子は、僕なんかと一緒にいちゃいけないんだ……)


自分にそう言い聞かせる。

住む世界が違うのだ……と。


だが──


「嫌っ!」


少女はそう言うなり、再び少年に飛び付いた。


「うわーっ!?」


再び岩の上に倒れ込む2人。


「な、何でまた、体当たりしてくるんだよ!?」

「体当たりじゃないわ、抱擁(ほうよう)よ!」

「こ、こんな力強い抱擁あるもんかー!」

「あなたには、温もりが必要なの!」


抗議の声を上げる少年を遮り少女は言う。


「でも大丈夫! 私が、あなたのお姉様になってあげるから!」

「ぼ、僕の方が年上だって言ってるだろー!?」

「いいじゃない、私、弟が欲しかったの」

「や、やっぱり、自分が欲しいんじゃないかー!」


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