白いツバサ
抱き付く少女を、なんとか引き離そうと踏ん張る少年。

そのとき、不意に突き刺さるような強い視線を感じた。


「ちょ、ちょっと待って!」


じゃれてくる少女を制止し、その方向に目を向ける。

そこには、1人の女性がいた。

赤く長い髪が美しい彼女は、年の頃は18くらいだろうか。

体を覆うマントの下から見える服装は、旅人のそれである。

だが、彼女が普通の旅人と違うところは……


(な、なんだ……この威圧感は……)


殺気すらも孕(はら)んだその視線。

少年の背筋に、冷たい汗が流れていく。


「な、何だ……?」


少年がつぶやいた瞬間、赤い髪の女性は口を開いた。


「き、貴様……アクア様から離れろーーーーっっっ!!」


貫くような激しい怒声。

それは、青い空の下を幾重にも響き渡った。





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