白いツバサ
小走りで2人の男に近付いていくパイロ。
「へへっ、ちょっとすみません」
その腰は低く、顔には媚びた笑みを浮かべている。
「……何か?」
その姿に、バーンは怪訝な顔を見せた。
「まぁ、そう警戒なさらず」
パイロは、大袈裟に掌を見せて振る。
掌を見せることで、危害を加えるつもりはないことを示しているのだ。
そそくさと2人に歩み寄ると、パイロはそっと耳打ちをする。
「旦那方、色々と腹に溜まっておいでではないですか?」
「……何が言いたい」
手揉みするパイロに、羽帽子の男の不機嫌な声が飛ぶ。
しかし、パイロは気にせず、いやらしい笑みを浮かべたまま言葉を続けた。
「いえね、日頃のうっぷんを晴らしてみてはいかがかなと」
「うっぷん、だと?」
「あちらを見てくだせぇ!」
パイロが指し示す先。
そこには、生気のない少年の姿があった。
バーンは首を傾げる。
「あの少年が何か?」
虚ろな瞳でこちらを見ている少年。
「……ほう」
その深い穴のような瞳に何かを感じたのか、羽帽子の男は短くうなずいた。
「お! そちらの旦那は、お気付きになったようで……」
パイロは、薄ら笑いを浮かべる。
「へへ……そうです、殴られ屋でございます」
「な、殴られ屋!?」
驚愕するバーンに、パイロは満面の笑みでうなずく。
「思う存分、日頃のうっぷんを吐き出してくだせぇ。もちろん、こちらは手を出しません」
そう言うと、パイロは少年を呼んだ。
少年は、ふらつく足取りで歩いてくる。
その体に見える無数のアザ。
それは、確かに拳の傷にによるものだった。
「まだ、年端もいかぬ少年だというのに……」
バーンは、わなわなと震える。
羽帽子の男は、ただ黙って口元に拳を当てていた。
「へへっ、ちょっとすみません」
その腰は低く、顔には媚びた笑みを浮かべている。
「……何か?」
その姿に、バーンは怪訝な顔を見せた。
「まぁ、そう警戒なさらず」
パイロは、大袈裟に掌を見せて振る。
掌を見せることで、危害を加えるつもりはないことを示しているのだ。
そそくさと2人に歩み寄ると、パイロはそっと耳打ちをする。
「旦那方、色々と腹に溜まっておいでではないですか?」
「……何が言いたい」
手揉みするパイロに、羽帽子の男の不機嫌な声が飛ぶ。
しかし、パイロは気にせず、いやらしい笑みを浮かべたまま言葉を続けた。
「いえね、日頃のうっぷんを晴らしてみてはいかがかなと」
「うっぷん、だと?」
「あちらを見てくだせぇ!」
パイロが指し示す先。
そこには、生気のない少年の姿があった。
バーンは首を傾げる。
「あの少年が何か?」
虚ろな瞳でこちらを見ている少年。
「……ほう」
その深い穴のような瞳に何かを感じたのか、羽帽子の男は短くうなずいた。
「お! そちらの旦那は、お気付きになったようで……」
パイロは、薄ら笑いを浮かべる。
「へへ……そうです、殴られ屋でございます」
「な、殴られ屋!?」
驚愕するバーンに、パイロは満面の笑みでうなずく。
「思う存分、日頃のうっぷんを吐き出してくだせぇ。もちろん、こちらは手を出しません」
そう言うと、パイロは少年を呼んだ。
少年は、ふらつく足取りで歩いてくる。
その体に見える無数のアザ。
それは、確かに拳の傷にによるものだった。
「まだ、年端もいかぬ少年だというのに……」
バーンは、わなわなと震える。
羽帽子の男は、ただ黙って口元に拳を当てていた。