白いツバサ
寝室につくと、子供たちは蜘蛛の子を散らすかのように、それぞれのベッドに潜り込んだ。

エアも、レインを椅子に座らせたあと、自分のベッドに入る。

ベッドの数は8床。

そして、子供たちの数も8人。

最年少は先ほどの双子で、つい先日5歳になったばかり。

面倒見の良いエアは16歳で、子供たちの中では最年長となる。

みんな、何らかの理由で孤児となった者たちだった。

レインは、子供たちの顔を見回す。


「さてと……何のお話をしましょうか?」

「いつもの、お姫様のやつー!」

「うん、騎士も出てくるのー!」


口々に言う子供たちに、レインは目を丸くした。

子供たちが言うその話は、もう幾度となく話したものだ。


「あなたたち、本当にこのお話が好きねぇ」

「うん!」


間髪入れずに返ってくる元気な声。

目を輝かせ待つ子供たちを前に、心の奥が温かくなっていくのを感じていた。


「うん……それじゃ話すわよ」


咳払いを1つ、レインは声の調子を整える。

子供たちは、皆、期待に満ちた目でレインを見詰めた。


しばしの沈黙の後……

レインは、ゆっくりと口を開いた。


「今は無き王国アルメリア……」


静かな声が響き渡っていく。


「──これから語るは、滅びし王国の物語……悲しき騎士と姫の物語……」





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