甘くて切なくて、愛おしくて
「ちょっと待って..何で佐野さんが来ること、知ってたの?」
「だってあたし、相談されたんだもん」
美香子が?
驚くあたしをよそに、美香子は話を続ける。
「資料の訂正個所を見付けたのよ。次の日、あんた直接先方に行くことになってたじゃない?」
美香子の話に黙って頷く。
確かに、あの次の日は出来上がった資料を持って取引会社に行く予定だった。
「あたしは後からでいいんじゃないかって思ったんだけど、佐野さんそれはどうしてもいるものだからって言われて。だったら今すぐ蝶花に連絡入れて聞いてみるって言ったら、それもいらないって言われて」
「そう、だったんだ..」
「でも、言ったのよ、今日はとても大事な用がある日だから、もし行くなら、ポストに入れるか管理人さんなら常時いるからその人に渡した方がいいって。
そしたら佐野さんそうするよって言ったのよ..」
なのに佐野さんは態々あたしに電話をした。
資料を届けたいからって..
それを美香子に話すと
「ったく佐野さんってば邪魔しちゃってさ」