甘くて切なくて、愛おしくて


仕事を終えて会社を出たのは7時を過ぎてからだった。今はそんなに大きな仕事はないため、わりと早い時間に退社出来る。


改札を通り、ホームで電車を待つ。帰宅ラッシュなのか、この電車を待ってる人はかなり多い。

各停で帰ろうかと一瞬思ったけれど、すぐに思い返した。今から40分も電車に乗るよりもさっさと帰ってお風呂に入って寝たい。明日も仕事だし、それに考えたい事もあるし..


何度も繰り返し思い出す朝の事を、あたしは一日ずっと考えていた。


というよりも、美香子のあんな真剣な表情を言葉をあたしは今まで聞いた事も見た事もない。


そういえば、聞きそびれたな、


美香子にもそういう人がいたのかって。




電車到着のアナウンスとメロディーと共に電車がやって来た。ゆっくりドアが開きぎゅうぎゅうになりながら入る。



「あ、」


「あ、」



多分同時だと思う。


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