甘くて切なくて、愛おしくて
少し落ち着いたのか、美香子に笑顔が戻った。
「もう過去の話なのにって思うでしょ?」
その質問には答えず、美香子の続きを待った。
「でもね、過去じゃないのよ。あたしの中ではまだ彼が一番で。一番大好きなの」
「うん」
「他の人を好きになろうとした事もあった。忘れようとした事も..あった、でも、出来なかったの、どう頑張っても忘れられないの。あの笑顔が、繋いでくれた手が..あの時の記憶が、離れないのよ」
誰かを失うという事がどれほど辛くて、苦しいものなのか。
あたしはまだそれを知らない。
だから当然なんて言えばいいのか分からない。
溢れる涙を拭いながら、美香子の方を見た。頼りない街灯が美香子の顔を照らす。
「でも、ね。あんな事を言っちゃったけど。あんたには頑張って欲しいと思ってる」