甘くて切なくて、愛おしくて


電話を切るとなるべく美香子を起こさないようにそっと起き上がり、準備をする。佐野さんからの電話がなかったらあと30分は寝れたのにっ!

カーディガンを羽織って家を出た。秋といえど季節はもう冬に近付いてるようなもので、もう少しだけ厚着してくればよかったと、エレベータの中で反省する。


何処にも止まることなく、1階に着いてエントランスを出ると、佐野さんが待っていた。


いつもの、余裕のある笑顔で。



「おはよう、もしかして寝てた?」


「はい。それよりも話って何ですか?もしかして仕事の事で何かあったとか?」


「俺、今からまた海外に行くんだ。その前に聞かせて欲しい。君の答えを」



答え..そんなものはとうに決まってる。何べんも言ってきた言葉。そっちがその気なら今日は分かるまで言ってやる。


「佐野さん、あたしには」


「沢城さんを好きだなんて認めないよ」


「でもっ..」


「言ったはずだよ、彼よりも俺の方が幸せに出来るって」


「確かに..そうかもしれないけれど」


「ね?沢城さん」



え...?


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