甘くて切なくて、愛おしくて
伸ばした手が沢城さんのスーツを掴んだ。振り向きもしてくれない、ただ、前を向いてまま。沢城さんの顔が..見えないよ。
「..たし、あたし..沢城さんの事、本当にす」
「それ以上は言うな」
ゆっくり振り返ってこっちを見る。掴んでいたスーツが手から離れた。
「駄目なんだよ、俺は..お前の気持ちに答えたら、いけねぇんだよ」
その声がどうしても辛そうで、悲しそうで。
あたしはそれ以上何も言えなくて。
歪んだ視界の中でただ立ち去る沢城さんの背中だけを見続けていた。