甘くて切なくて、愛おしくて
仕事はいつも通りこなしていたはずだった。授業に出て、生徒達に教えて、チャイムが鳴れば職員室へ向かい、プリントを作って、また授業。放課後は生徒達の補習に、それが終われば職員室へ戻って事務作業。
「沢城先生、何かありました?」
もう少しでプリントが出来るという所で、背後から声がした。振り返ると心配そうな瞳が俺を見つめる。
「別に、何もありませんよ」
「生徒達が言ってましたよ、先生今日元気なかったって」
「そんな事、ないっすよ」
別に普通にしていたつもりだったのに。何でこうも簡単にバレてしまうんだろうか。
「ちょっと付き合って下さい」
俺の返事を待たずに腕を引っ張られて職員室から出される。
「何処に行くんですか?」
「あたし、今日見回り当番なんです」