甘くて切なくて、愛おしくて



腕時計を見て時間を確認しようとしたその時、
マンションのエントランスのドアが開いて
中から黄色い帽子を被った一人の男の子がマンションから出てきた。



「っしゃーーー!!」


何かいい事があったのか、大きくガッツポーズをしている。
後ろ姿だけなので顔はよく見えないけれど、何だかこっちまで
自然と笑顔になる。

彼はそのまま走って行ってしまった。左右に揺れてる
ランドセルが何とも微笑ましい。
もう一度腕時計に視線を落とすと、そろそろわたしも行かなければ
いけない時間だ。


「行かなくちゃ」


彼とは正反対の道に体を向けて駅への道を歩き出した。










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