甘くて切なくて、愛おしくて
あたしはなんて事を思ってしまったんだろう。
一目見ればわかる事だったのに。
着ているものも、
父さんと喜んで走って行った姿も。
見つめるまなざしも。
それだけで何もかもがわかるつもりだったのに。
「とにかく、すみませんでしたっ!」
深く頭を下げるとその場から逃げるように立ち去った。
“どうしよう”そればかりが頭の中いっぱいで。
だけれども振り返る勇気を持つことは出来なかった。