甘くて切なくて、愛おしくて
ど、どうしよう..私も降りればよかったのかな。
この状況はさすがに恥ずかしすぎる。
でも助けてくれた人に一言お礼を言わなくちゃ。
辺りを見回してみると、目印にしていた紺色のスーツはすぐに見つかった。
「あ、あのっ!」
少し恥ずかしいけれど彼の顔を見る。
それなのに、何故か胸が高鳴った。
私よりも20センチ以上高い身長の彼は少し窮屈そうに
吊り輪に手をかけている。
漆黒の髪は少し長めで、だけれど清潔感はある。
整った顔立ちなのに顔をしかめて私を見下ろしている。
本当にこんな人が現実にいるんだっていうくらいカッコよくて。
顔どころか、体まで熱くなっていく。
あたし、こんな素敵な人に助けてもら..
「なるほどな」
「へ?」