甘くて切なくて、愛おしくて
走りながらも続く口げんかに、通行中の人がじろじろ見てる。
ユウキ君は何も言わずにあたしに腕を掴まれたまま黙って走る。
「ついじゃねぇし!ってか..勝手に、好き勝手、言いやがって」
「だって..ハァ、見て..られなかったから」
「見てられなかったってそんなの、俺が謝れば済む事だろ、それに..」
「違いますっ!ほら!」
走るのを止め、激しく乱れた呼吸を何とか元に戻して、それから
ユウキ君の手を掴んで、見せた。
「なんだよ」
「見てなかったの?ユウキ君がどんな顔をしていたか。
..こんな小さな手で精一杯拳を作ってお父さんの悪口に耐えていたかっ!」
「でもそれはお前には..」
「関係ある!だって..約束したもの、ユウキ君と、お父さんの悪口言わないって、もう..言わないって..」
「それはお前の話だろ?」
「そうだけどっ!!嫌なの!!」