100日愛 [短]
ギューッと抱き着いた。
……夾が潰れてしまうくらいに、ギューッと。
そこに存在しているのは、ただの甘えんぼな薫だけじゃない。
「……よかった…」
胸を撫で下ろすようにホッと温かい息を吐く。
迷子のような薫は、本気で夾を探していた。
―――何かに怯えるように、必死になっていて……。
「薫…?」
思わず、また薫の感触を確かめてしまうが、触り心地に変哲はない。
俺から消えたりすることとかはない、な。
肩の力を落として、薫の頭を優しく二回撫で付けた。
薫の力もふわりと抜け、夾に満面の笑みを見せる。
「大丈夫か?」
「うん。隣に居なかったからビックリしただけ」
「そうか。…とりあえずシャワー浴びて来いよ」
「分かったー」
自分から離れ、バスルームに駆けていく薫を見つめる。
「コーヒー…飲みてぇな」
そうしてまたリビングに戻った。