100日愛 [短]
―――――………
「夾くん、上がったよー」
バスタオルを肩にかけながらリビングに入ってきた薫は、ソファーに座りコーヒーを啜る夾を見て、驚愕した。
慌てて夾に駆けより、覗き込む。
目をキラキラ輝かせ、非常に興味を持った様子に夾は「なんだよ」と眉を潜めた。
「…これ…何?」
薫が指したものはお馴染みのマグカップ。
もちろん中身は夾が煎れたコーヒーだ。
「何って、香りで分かるだろ?コーヒーだよコーヒー」
「コーヒー?!夾くんが煎れたの?!」
「あ?当たり前だろ」
「ちょ…頂戴!これは薫が飲む!」
「はぁ?あっ…おいっ!」
薫は強引にコーヒーを奪い、口に含んだ。
ゴクリと、喉が動く。
「……インスタントじゃない」
「馬鹿にしてんだろ…」
怒りを交えた言葉にも、薫はテンションを変えることなく感激する。
「夾くん…コーヒー煎れられるようになっちゃった…」
「なっちゃった、ってなぁ…」
「仕方ねぇだろ。
お前が居なくて俺がやんなきゃ飲めなかったんだから」
そう言おうとして、口を閉じた。
危ねぇ……。
自分で自分の首を絞めるところだった。