100日愛 [短]
数分後。
ホカホカと、湯気が立ったカップが差し出される。
薫のピンクのマグカップ。これを使うのは初めてだ。
色も香りも、夾が煎れたものとは格別。
薫が煎れたコーヒーか…。
久しぶりだな……。
じっと黒い液体を見つめる。
表面に自分が薄く映った。
それがユラユラ揺れて、何か夢を見ている感覚。
ソファーがフワッと沈んで、隣に薫が座る。
夾の肩に少しだけ寄り添って、コーヒーを啜る音が聞こえた。
それが心地好くて、自分もゆっくりと口に付けた。
「…ん…上手い」
夾の声で、薫は飛び上がったように喜んだ。
「ふふ!さすが薫〜」
「お前には敵わねぇなぁ」
えへんと胸を叩く姿に、夾もフッと笑みを零す。
温かい日だまりの中にいるようで、その温かさがコーヒーとなって体を流れる。