100日愛 [短]
ずっと存在していて欲しいと思う。
その温もりが体に馴染んで行ってしまうことに胸が苦しい。
思わず、薫の左手を握った。
冷たい手が、ヒヤリと感覚を突き刺す。
それと同時に………
スルッ。
え?
その冷たさは直ぐに消えてしまった。
僅か数秒。
手に触れたとき、何か違和感があったけれど、それが何なのかは分からない。
「薫?」
「あっ……ゴメン。薫、こっちに座るね」
そう言って、夾の右側から左側に移った。
そして今度は薫から手を握る。
「…薫?」
「ん?」
夾に応えて、見上げる目。
それが必死に訴えてる。
―――何も聞かないで―――
夾は暗闇を宿した目を見逃さなかったが、それ以上口を開かなかった。
触れてはいけない。と、体中で警告がなっている。
「……何でもない…」
夾は力が込められた自分の左手に、優しく力を入れた。