100日愛 [短]
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時計の針が、12の文字盤を指す。
少し離れたところから、薫の笑い声が聞こえた。
体も重ね合ったけれど、未だに信じられない。
耳に入る声は、聞きたくないようで聞きたくて。
複雑だった。
薄手のジャンパーを羽織って、リビングに戻る。
「じゃあ行ってくる」
「あ、行ってらっしゃい」
薫は満面の笑みで玄関までついて来た。
夾は頭を撫でてやりながら、優しく顔を近づける。
「いい子にしてろよ」
「クスッ…。はーい」
チュッと小さく音を立てて唇は離れ、夾は玄関を閉めた。
自分で鍵を駆けてから、エレベーターに乗り込む。
昼飯のメニューを考えていると、すぐにロビーについてしまった。
薫は戻ってきてくれたが、死亡届けだって出してる。
ここに薫と住んでから結構経ったし、彼女は人付き合いが良いから近所や近隣の主婦と仲が良かった。
今薫を外に連れ出したら、パニックになりややこしいことになってしまうことは十分想像できた。